NIDSコメンタリー 第425号 2026年3月17日 衛星画像解析にみる中国の航空戦力運用構想 ―― 海峡沿岸に出現した旧式戦闘機の出所を手掛かりとして

地域研究部米欧ロシア研究室
相田 守輝

1.はじめに

近年、「台湾有事」をめぐる議論が国内外で活発化している1。中国人民解放軍(PLA)は台湾海峡周辺において大規模な軍事演習を繰り返し、沿岸地域の軍事インフラ整備も進められている。とりわけ航空基地の改修や拡張は、将来的な航空作戦能力の向上と関連付けて論じられることが多い2

こうした状況の下、台湾海峡沿岸の航空基地を衛星画像で観察していると、ある違和感に気付く。新鋭の多用途戦闘機が配備されつつある基地の一角に、1960年代に設計された旧式戦闘機が混在して駐機しているのである。通常、作戦基地において主力機と退役世代の航空機が同一エプロンに並ぶことは考えにくい。とりわけ前方基地では、整備、補給、訓練などの効率性から機種の統一が図られるのが一般的である。

では、この旧式機はなぜ台湾海峡沿岸の前方基地に存在するのだろうか。本稿は、この疑問を出発点として、オープンソースの衛星画像を用い、当該機体の配置と出所を追跡することで、中国の航空運用構想の一端を検討するものである。具体的には、第一に沿岸基地における新旧戦闘機の混在状況を確認し、第二に内陸に集積する同型機の拠点を特定することで供給関係の可能性を検討する。さらに第三に、退役機の無人化という文脈を踏まえ、その運用上の含意を考察する。

すなわち、本稿の目的は個々の兵器性能を評価することではない。衛星画像が示す「配置」という事実から、航空運用の設計思想を読み解くことにある。

なお、近年ではGoogle Earthなどの公開衛星画像サービスを利用することで、中国のPLA飛行場を確認することが可能となっている。本稿では座標を併記しているので是非確認されたい。

2.前方基地で何が起きているのか ― 新旧戦闘機の異例の混在

台湾有事をめぐる議論が活発化する中で、まず注目されてきたのは沿岸基地の能力向上である。中国の台湾海峡沿岸では、PLAが関与する飛行場において近年大規模な施設工事が進められている。この飛行場拡充を踏まえ、一部の専門家では「台湾侵攻」の可能性に警鐘を鳴らす議論も行われている3

事実、台湾海峡に面する福建省に点在する飛行場の衛星画像を見ると、滑走路・誘導路・エプロンの拡張や掩体壕の整備など、近年改修が進んでいる様子が確認できる。広東省湛江市付近に所在する遂渓飛行場(座標 N21°23′30.9″ E110°11′46.9″)はその代表例と言える。

図1のとおり、2018年10月時点では、単一の滑走路と限定的な誘導路、南側に小規模なエプロンを有する構成であった。これに対し、2022年12月の衛星画像では、既存滑走路の西側に並行する新滑走路だけでなく、両滑走路を結ぶ連絡誘導路や高速脱出誘導路が整備されている。さらに中央部には大規模エプロンが新設され、航空機の駐機および整備能力の拡大が確認できる。

図1:遂渓飛行場の拡張状況(左:2018年10月、右:2022年12月)

図1:遂渓飛行場の拡張状況(左:2018年10月、右:2022年12月)

出所:Google Earth(© Maxar Technologies, 左:2018年10月;右:2022年12月)

これは周辺地域の緊張の高まりと整合しており、前方展開能力の向上を意図した取り組みと理解できる。中でも特徴的だったのが、福建省漳州市龍海区に所在する龍田飛行場(座標 N25°34′21.1″ E119°27′40.6″)である(図2-1参照)。

図2-1 龍田飛行場

図2-1 龍田飛行場

出所:© BlackSky 2026. All rights reserved.

この龍田飛行場も2020年2月以降改修が進み、強化掩体壕(HAS)、弾薬庫、警戒施設等などの増設が進むほか、エプロン地区も大幅に拡充されている。

図2-2は、そのエプロン地区を拡大した衛星画像であり、新鋭の双発戦闘機と旧式の単発戦闘機が同一エプロンに駐機している様子が確認できる。このように、前方基地において旧式機が存在すること自体よりも、新鋭機と同一の運用空間に配置されている点が特異である。

まず新鋭機については、①コックピット前方にIRSTセンサーが確認しにくいこと、②対艦・対地攻撃を行うための翼下パイロンが多いこと、③双垂直尾翼の間の胴体上面が広いことなどが確認できることから多用途戦闘機J-16であるものと考えられる4。近年、沿岸の前方基地では従来の制空戦闘機J-11に代わり、このJ-16の配備が進んでいるとみられ、対地・対艦・防空制圧任務を含む多機能運用への移行を示唆している。

図2-2:龍田飛行場のエプロン地区拡大写真

図2-2:龍田飛行場のエプロン地区拡大写真

出所:Google Earth(© Maxar Technologies, 2022年7月)

一方、同じエプロンに駐機する小型の後退翼機は、機体形状から旧式戦闘機J-6(増加タンク付き)と推定される。このJ-6は、ソ連製MiG-19を基に1960年代に大量生産された第2世代戦闘機である。第二次台湾海峡危機を背景に、毛沢東の指導下で国産化が急がれた機体であり、既に第一線を退いている5

現代において、前方基地にJ-6が存在する合理的理由は直ちには説明できない。すなわち、新鋭の多用途戦闘機と旧式機が併存する状況は、単なる機種更新では説明できず、異なる任務を持たせている可能性を示唆している。

3.衛星画像が示す供給拠点 ― 旧式戦闘機J-6はどこから来たのか

沿岸の前方基地に存在する旧式機の供給源を考えると、後方地域に同型機が集中する拠点の存在が想定される。衛星画像で探索すると、中国内陸の西安市から東南東約370kmに位置する場所に特徴的な飛行場が確認できる。その飛行場は、河南省平頂山市魯山県にある宝豊飛行場(座標 N33°41′04.6″ E112°53′26.9″)と呼ばれている(図3-1参照)。

図3-1:宝豊飛行場

図3-1:宝豊飛行場

出所:Google Earth(© 2025 Maxar Technologies, © 2025 CNES /Airbus, 2022年11月)

この飛行場には、磁方位100度-280度に伸びる長さ2180m、幅45mの滑走路があり、その両端からそれぞれ南方向へ約1600mの誘導路が伸びている特徴を有する。これら誘導路はそれぞれ市街地を貫きながら山のふもとまで繋がっている。さらに、この飛行場は民間飛行場とは判別できず、一方で軍用飛行場とも言い難い特徴を有する。

事実、この飛行場には、強化掩体壕(HAS)、弾薬庫、警戒施設等の軍用飛行場で標準とされている施設が見当たらない。その代わりに、細長い整備建屋や広いエプロンが確認できる。このことから、この飛行場は、PLAの作戦基地とも民間空港とも異なる飛行場であり、退役機体の評価・管理に関係する機能を持つ試験飛行場に該当する可能性が高い。

一方で、この飛行場を細かく見ていくと、膨大な数の旧式戦闘機が駐機していることから目を引く。拡大した衛星写真を確認すると、滑走路に隣接する誘導路上には、旧式のJ-6戦闘機やIl-28爆撃機が多く駐機されていることが確認できる(図3-2参照)。

図3-2 宝豊飛行場に集積されている旧式航空機

図3-2 宝豊飛行場に集積されている旧式航空機

出所:Google Earth(© 2025 Maxar Technologies, © 2025 CNES /Airbus, 2022年11月)

しかも、エプロン地区に並ぶ膨大な数のJ-6は、展示施設でみられるような配置ではなく、牽引すれば直ちに移動可能な配置で維持されている。つまり、単なる地上展示や長期保管とは異なる管理形態である可能性が高い。

さらに、前述した滑走路両端から延びる誘導路を辿ってみれば、図3-3の画像右下には、山に穴が掘られた航空機格納用のバンカーが確認でき、また画像左には博物館らしき施設と展示機が確認できる。

現地の地方政府の広報ホームページによれば、1960~70年代に建設されたこの飛行場は当初軍用飛行場として使用されており、1971年のいわゆる「林彪事件」と関連して言及されることもある。林彪は当時、中央軍事委員会副主席として、毛沢東の下でPLAを統括する立場にあった人物である6

図3-3:宝豊飛行場の南に位置する航空博覧館

図3-3:宝豊飛行場の南に位置する航空博覧館

出所:Google Earth(© 2025 Maxar Technologies, © 2025 CNES /Airbus, 2022年11月)

現在では、「航空展覧館」として公開されており、PLA空軍の退役機保管センターとして、飛行可能期間や利用価値が残る退役軍用機が多数搬入され、一方で戦闘準備などの用途に供されているという7

このことから、台湾海峡沿岸の前方基地に少数が分散している旧式戦闘機J-6と、内陸基地に大量集積している同型機という配置関係は、単なる保管ではなく、供給拠点と運用拠点の関係として理解する方が自然である。すなわち、沿岸の前方基地に出現した旧式戦闘機は、後方拠点から計画的に移動された可能性が考えられる8

4.運用構想の含意―旧式戦闘機は何に使われるのか

以上の観察から、旧式戦闘機が内陸に集約されながらも沿岸の前方基地に出現している現象は、通常の防空戦闘任務を想定した配置とは考えにくい。航空優勢を獲得するために旧式戦闘機を前進配置しているのではなく、異なる性格の任務を前提とした運用が想定されている可能性がある。

中国における無人機開発は1960年代に遡る。そして1984年にはMiG-15bisを改造した標的無人機の試験飛行に成功し、その後も高速飛行や遠隔操作技術の改良が継続されてきた9。すなわち、退役戦闘機を無人化して再利用する技術的基盤は、突発的に出現したものではなく、長期的な蓄積の上に成立しているのであり、この点を過小評価すべきではない。

J-6は既に現代の空対空戦闘に耐え得る機体ではない。しかし、退役後も標的機として使用されてきた経緯を踏まえれば、無人化改修を経て再利用されることは技術的に不自然ではない。これらを体当たり的な攻撃に転用しようとする議論は中国の言論空間でしばしば見られ10、さらに海外の専門家からも同様の指摘を受けてきた11

ここで注目すべきは、無人化された機体であれば人的損失を伴わず、高い損耗率を前提とした運用が可能となる点である。すなわち、敵防空戦力に迎撃を強制するだけでなく、その迎撃を突破した一部がそのまま地上施設へ体当たりする運用を想定することができる。

仮に無人化されたJ-6が片道的な運用を前提とするならば、防空レーダーサイト、地対空ミサイル陣地、飛行場施設、あるいは重要インフラに対する直接的攻撃手段として機能し得る。旧式戦闘機であっても、時速数百キロで飛来する機体が突入すれば、その運動エネルギーと破壊力は決して軽視できるものではない。問題は機体の世代ではなく、防空網を突破した場合の帰結である。すなわち、敵に迎撃を強制し弾薬や要員を消耗させつつ、一部が突破することで物理的損害を与える複合的攻撃構想として理解できる。

こうした可能性は、泥沼化しているウクライナ戦争でも同様の現象がみられた。ウクライナは旧式ドローンを巡航ミサイルとして活用し、ロシアに打撃を与えてきた12。拙稿「中国が想定する将来の航空戦」(『「新たなる戦争」の諸相』)において筆者は、PLAがウクライナ戦争を教訓として、将来の航空戦に備えて様々な検討や装備体系の改良を行いつつあることを説明した。特に、中国が防空網を正面から突破するのみならず、多数の無人機を用いて防空反応を引き出し、その機能を低下させる方策をPLAの専門家たちが模索している点を指摘した。近年の戦闘では長距離ドローンやミサイルの継続的投入が観察されており、航空戦は「防空体系の持続的無力化」を重視する方向へ変化しつつあると考えられる13

さらに重要なのは、J-6という一機種に議論を限定すべきではない点である。中国にはこれらJ-6に続いて、MiG-21を模倣したJ-7戦闘機、さらにそのJ-7を改良したJ-8戦闘機など、膨大な数の退役戦闘機が存在する14。仮に退役戦闘機の無人化が体系的に進められるならば、問題の本質は退役戦闘機群全体が将来的な無人攻撃資源として再編され得る点にある。

新鋭の多用途戦闘機が防空制圧や精密打撃を担い、無人化された旧式戦闘機群が防空網の飽和と突破を試みる構図が成立するならば、将来の航空戦は新たな段階に入りつつあると解釈できる。問われているのは機体の世代差ではなく、退役戦闘機群という潜在的資源をいかに再利用するかという運用設計思想である。

5.結論 ― 衛星画像が示す運用の転換

本稿は、「衛星画像解析にみる中国航空戦力の運用」という視角から、台湾海峡沿岸の前方基地に出現した旧式戦闘機の配置を出発点とし、その出所を追跡することによって、中国の航空運用構想の一端を検討した。衛星画像を精査することで、沿岸の前方基地と内陸拠点との配置関係を具体的に確認し、旧式機の再配置と再編の可能性を可視化した点に、本稿の方法論的意義がある。

衛星画像が示したのは、単なる装備更新ではない。退役戦闘機群を再編成し、無人化という形で運用体系に再び組み込みつつある兆候である。旧式戦闘機が片道的攻撃手段として位置付けられる場合、防空側は迎撃を継続せざるを得ない一方、迎撃をすり抜けた機体が直接的な物理的損害を与える可能性を否定できない。このとき問題となるのは、個々の兵器性能ではなく、防空の持続性と消耗への耐性である15

さらに重要なのは、J-6という一機種に議論を限定すべきではない点である。中国にはJ-7、J-8など膨大な数の退役戦闘機が控えている。仮に退役戦闘機の無人化が体系的に進められるならば、その対象は一機種にとどまらず、将来的に相当規模の無人攻撃資源が形成され得る。問題の本質は、退役戦闘機群という潜在的資源をいかに再利用するかという運用設計思想にある。

航空戦力の評価は往々にして最新鋭機やステルス性能に焦点が当たりがちであるが、本稿が示唆するのは、退役戦闘機群という「背後に控える潜在的戦力」に目を向ける必要性である。衛星画像は兵器のハード面の現代化のみならず、運用思想というソフト面の現代化をも映し出す。

また、本稿の検討過程では、航空基地の配置を衛星画像から観察する中で、その基地が冷戦期の軍事施設として建設され、林彪事件と関連して言及される歴史的背景を持つことも確認できた。オープンソースの衛星画像であっても、軍事配置を把握する手段に留まらず、飛行場の形成過程や歴史的文脈を再確認する契機ともなり得る。

今後求められるのは、迎撃能力の高度化だけではない。迎撃をどれだけ継続できるのか、弾薬備蓄や要員体制が長期的消耗に耐え得るのかという観点から、我の防空体制を再評価することである。

衛星画像が示す変化は小さい。しかし、退役戦闘機群の再編という構造的変化を見落とせば、将来の航空戦の様相を誤認する可能性がある。本稿で示したのは一つの仮説に過ぎないが、配置の変化が意味する設計思想の転換を継続的に検証していく必要はあるだろう。

Profile

  • 相田 守輝
  • 地域研究部米欧ロシア研究室所員
  • 専門分野:
    中国をめぐる安全保障