憲法9条制定
アメリカにとって、日本を非軍事化・民主化し、「再び米国の脅威となり又は世界の平和及安全の脅威とならざることを確実にする」(「初期対日方針」第一部(イ))ための究極の改革は、憲法改正でした。そしてその目玉となったのは、いうまでもなく第9条の「戦争放棄・戦力不保持」条項です。
一方、日本側は、憲法改正を大日本帝国憲法の微修正にとどめようとしていました。憲法問題調査委員長だった松本烝治国務相が1946年1月4日に起草した憲法改正私案は、「天皇は軍を統帥す」(第11条)といった条文案に見られるように、明治憲法とほとんど変わらない内容でした。
マッカーサー元帥は、憲法改正権限を掌握することになっている極東委員会が2月26日に活動を開始するのに先んじて、憲法改正の主導権を握る必要に迫られていました。2月1日に『毎日新聞』のスクープによって、松本委員会が作成している憲法改正案の一案の内容が明らかになると、GHQ自身が新憲法草案の作成作業を開始します。
2月13日にGHQ草案の手交を受けると、日本側は同案をもとに改めて新憲法草案を起草しました。こうして作成された3月6日の帝国憲法改正草案要綱は、「国の主権の発動として行ふ戦争及武力に依る威嚇又は武力の行使を他国との紛争の解決の具とすることは永久に之を抛棄すること」「陸海空軍其の他の戦力の保持は之を許さず国の交戦権は之を認めざること」との条項(第9条)を置きました。これが日本国憲法9条となるのです。
(千々和泰明)