戦史研究

防衛研究所は、我が国最大の戦史に関わる機関として、防衛政策ニーズ・自衛隊の教育訓練に適切に応えるため、国内外の戦史研究を行い、更に近年、歴史となりつつある戦後の安全保障政策史の研究へと幅を広げるとともに、戦前・戦中期の日本の国防に関する史料を管理し、広く一般公開しています。 また、戦史研究室、安全保障政策史研究室、国際紛争史研究室からなる3個研究室及び史料室を包含した体制において、戦史研究センターとしての態勢を整えています。

過去を教訓に、現在に生かす

防衛研究所戦史研究センターの歴史は、1955 年(昭30)、旧帝国陸海軍の史料の収集・整理と太平洋戦争に関する公刊戦史の編さんを目的として、その前身である戦史室が設立されたことに遡ります。

戦史叢書
【「戦史叢書」の刊行】

公刊戦史は、1966 年(昭41)から1980 年(昭55)にかけて全102 巻の「戦史叢書」として刊行されました。平成27 年度末に電子データ化を完了し、現在ホームページ上での公開に向けて準備を進めています。

調査研究

戦史の調査研究は、現在、そして将来における国家の安全保障環境や安全保障問題を考察する上でその基盤を提供するものとして必要不可欠です。また過去相互に影響し合っていた国家間において歴史認識に関して意見交換を行うことは、将来における相互の関係を維持・促進する上で大きな意味を持っており、過去の戦争をめぐる諸外国の歴史認識も重要な研究課題となっています。 このため、防衛研究所は現在、歴史研究の活動において国際比較のアプローチを採ることによって、狭い意味での「日本戦史」や「外国戦史」の枠にとらわれずに、調査研究の幅を広げるよう尽力しています。

研究課題

最新の研究動向、史料をもとに、戦史に係わる歴史事実を常に検証し続けるとともに、現在の日本の安全保障政策に歴史的視点から寄与するために、次のような課題に取り組んでいます。

第二次世界大戦に関する戦史の再検討

新たに公開された史料、最近の研究成果を生かすとともに、外国の視点も取り入れて、先の大戦に関する戦史の編さんに着手しています。

戦後日本の安全保障政策史への取り組み

既に歴史となりつつある自衛隊の創設・発展過程を含めた戦後日本の安全保障政策についての調査研究のほか、オーラル・ヒストリーを実施しています。

国際紛争史の調査研究

歴史を通じて世界各地で生起した国際紛争について、今後の安全保障政策・自衛隊の教育訓練に資す る歴史的教訓を提供するために、調査研究を実施しています。

海外における戦史史料の調査·収集事業

戦史編さんには、現在明らかであるとされる史実の検証に加え、これまで明らかとなっていない史実の発掘を絶え間なく積み重ねていくことが必要です。特に海外では時間の経過とともに、戦史史料が公開されてくることから必要な戦史史料の調査収集に力を入れ、新たな史実の発見に努めています。

「オーラルヒストリー」の作成

オーラルヒストリー
オーラルヒストリー

我が国の戦後安全保障政策に関して、過去の出来事を当事者から聞き取り、記録に留めるという「オーラル・ヒストリー」の作成に力を入れています。

戦史史料の公開

防衛研究所戦史研究センター史料室は、前身の図書館史料閲覧室であった2001 年(平13)3 月30 日、 歴史的資料を特別に管理する施設として総務大臣に指定され、2002 年(平14)と2011 年(平23)、組織改編を経て現在に至っています。

戦史研究センター史料室で所蔵する主な史料は、1956 年(昭31)、当時復員業務を担当していた厚生省(現在の厚生労働省)から戦史室に移管された旧帝国陸海軍の記録や、 1945 年(昭20)の日本の降伏に際して占領軍に押収され米国国務省公文書部から返還された文書があります。このほか、1868 年(慶4/ 明1)の明治維新から1945 年(昭20)に至る間に作成された個人所蔵の史料も収集し、 現在では、旧帝国陸海軍に関する約158,000 冊(陸軍史料約58,000 冊、海軍史料約38,000 冊、戦史関連図書等約62,000 冊)の史料を所蔵しています。

防衛研究所戦史研究センター史料室では、これらの史料を国立公文書館と同様に一般公開しており、 問合せも受け付けています。戦史史料に関する国内外からの照会件数は、年間およそ1,800 件、利用者も約4,000 名に達しています。

また、アジアに関する戦史史料(公文書)をデジタル化して国立公文書館アジア歴史資料センターに提供しています。

大本営陸軍部の命令(大東亜戦争)
大本営陸軍部の命令
(大東亜戦争)
戦闘詳報(日露戦争)
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