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アジア・太平洋諸国安全保障セミナー

議長総括 第13回アジア・太平洋諸国安全保障セミナー

於 防衛研究所 2006年11月14日~20日

  1. 防衛研究所は、「軍の変革とアジア・太平洋地域の安全保障」というテーマで第13回アジア・太平洋諸国安全保障セミナー(APSS)を開催した。
    域内からは、以下の22ヶ国から代表が参加した。
    オーストラリア連邦、ブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、カナダ、中華人民共和国、インド、インドネシア共和国、日本、大韓民国、ラオス人民共和国、マレーシア、モンゴル国、ミャンマー連邦、ニュージーランド、パキスタン・イスラム共和国、パプアニューギニア独立国、フィリピン 共和国、ロシア連邦、シンガポール共和国、タイ王国、アメリカ合衆国、ヴィェトナム社会主義共和国
  2. 研究会は、基調講演と討論から構成された。「アジア及び太平洋地域における安全保障協力の推進」と題された基調講演において、中央大学法科大学院横田洋三教授が新たな安全保障環境において変化する軍の役割について述べた。
  3. 参加者は討論において以下の3つの問題について発表した。すなわち「新たな脅威とその国防政策への影響」「国際平和協力活動」及び「指揮、組織及び管理をめぐる多様性」である。
  4. 参加者は、最初のトピックである「新たな脅威とその国防政策への影響」については、軍事的な脅威として、大量破壊兵器の拡散、領土問題、天然資源獲得競争、テロリズム、国境を越える犯罪、伝染病、大規模な人員の移動を指摘した。そして環境問題をもっとも重要な新たな脅威と位置付けた。
    これらに効果的に対処するためには域内各国が次の事項について促進させる必要があることで同意した。すなわち(a)軍の変革と域内協力のメカニズム(b)域内の平和維持活動、災害救援活動における国際協力(c)多国間の演習、訓練(d)情報の共有(e)軍備管理・軍縮(f)法執行活動における軍の支援(g)国境横断的機構の構築である。
    そして、参加者はこれらの目的達成のための方策について討議した。その中で地域の各国軍隊は次の事項について充実すべきであるとした。すなわち(a)人的資源(b)継続できるC4ISR(c)弾道ミサイル及び防空能力(d)訓練施 設(e)長距離輸送能力である。
  5. 参加者は、第2のトピックである国際平和協力について、平和支援活動(PSO)の国防政策に対するプラス・マイナス両面の影響について検討した。
    プラス面としては、平和支援活動は、伝統的な軍事的脅威を含む地球規模の異なる挑戦に対処するための作戦上の技量向上に役立つ。平和支援活動はまた、参加国間の互運用性を向上させ、士気を高揚させるとともに、国家のイメージを改善させる機会を提供することになる。
    マイナス面に関しては、平和支援活動は、部隊の即応性と継戦能力を低下させるとともに、伝統的脅威への所要兵力の投入を妨げることとなる。域内の軍隊は、平和支援活動から得られた教訓、例えば、明確に定義された役割や任務、確証された作戦計画の策定を実行に移すことが求められている。
    参加者からは、標準業務手順策定のため、各国が共有できる最低レベルの基準の設定や、共同訓練・演習の拡大を追求すべきであるとの意見があった。
  6. 第3のトピックである指揮統率、組織、管理における多様性への対応について参加者は、域内の軍隊の中には、民族、宗教、ジェンダー、学歴及び世代間のギャップという幅広い多様性に起因する問題が存在することを理解した。多様性をめぐる状況は、国により相違し、そして共通の解決策は見つからない。しかしながら参加者は、多様性の中の調和が共通の目標であることについて見解を共有した。
    各国政府は、この目標達成のために努力をするべきである。多様性それ自体は弱点ではない。多様性は、強さの源泉となる可能性を秘めており、また利点を提供する。
    ある国家の軍は、多様性を有効活用している。軍隊は、例えば募集の拡大や組織における公正を強調することによって社会の統一に寄与し得る。
    ある国々においては、少数民族の統一は、軍隊勤務を通じて強化されてきている。域内各国は、経験を交換することや解決モデルの提案により相互に支援し合うことが可能である。そのためのセミナーや取極は有効な手段である。
  7. 参加者は、上記の新たな困難に対応するため、アジア太平洋諸国間における安全保障対話の促進についての継続的な努力の必要性について同意した。
    この過程の一部として以下のような対応が可能であろう。すなわち、参加者を国連、他国家機関そして非政府組織にまで拡大すること。セミナーの実施項目として机上訓練を追加すること、そして将来のセミナーにおいて、人間の安全保障や伝染病のような非伝統的な安全保障の問題に焦点を当てることである。
  8. 第13回APSSの成果を次回のASEAN地域フォーラム(ARF)国防大学校長等会議に報告することについて同意が得られた。参加者は本セミナーの成果をそれぞれの政に対し報告することについて同意した。

注: APSSは、参加国相互の信頼醸成のための多国間安全保障対話として1994年以降毎年開催されており、発足以来、幅、深さの両面で安全保障対話を充実させてきた。1994年に13ヶ国の代表を招いて開始されたAPSSは、いまや22ヶ国が参加するまでになっている。その基本目的及び協議事項は、ASEAN地域フォーラム(ARF)国防大学校長等会議と共通している。このような背景から、第12回APSSの議長総括は、本年9月にマレーシアのクアラルンプールで開催された同会議に提出された。

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